為替デリバティブは、金融機関などが「為替リスクのヘッジ」をうたい文句に平成17〜19年に売り出した金融商品で、円安時に本業が被るダメージをカバーする目的で主に輸入企業が契約をした。急激な円高でこの契約が中小企業の財務を圧迫し、倒産に追い込まれる会社も出るなど社会問題化している。勝浦弁護士は、実態が見えにくいデリバティブ問題について語ったなかで、「問題の本質は、そもそもフェアな取引ではなかったこと」として、為替デリバティブを売り出した金融機関に問題があったことを強調した。 被害の実態について「外国から材料や機械を取り寄せているようなアパレルや電器、樹脂加工、医療機器、農業関連など、多岐にわたる業種が被害にあっている」としたうえで、誰にも相談できずに多額の損失を膨らませ続けている経営者がいる可能性を示唆した。 解決策として金融機関との直接交渉、金融ADRの利用、訴訟の3つを提示。直接交渉は最も穏便な方法ではあるものの「効果が薄い」ことから、金融ADRか訴訟が適切とした。特に勧めているのが金融ADRで、「訴訟では考えられないほどのスピード感で和解案が提示される。費用も訴訟と比べると低額で、銀行とのあつれきも生じにくい」などのメリットを挙げ、「利用する際の負担は少ないため、チャレンジしてみる価値は十分ある」と主張した。金融ADRで主張すべきポイントとしては、金融機関の説明不足に注力するより、リスクヘッジの程度や財務耐久性に見合わない取引内容だったことをアピールすべきとアドバイスした。 経営者に対して顧問税理士ができることとして、為替デリバティブによる損失の有無を確認すること、もし被害を受けている場合は損失の一部を取り戻せる可能性について伝えることにあると説明。中小企業を救えるのは税理士であるとした。また、弁護士に依頼して金融ADRを利用する場合にも、「その会社のヘッジニーズや財務耐久性について客観的で説得力のある説明をするためには顧問税理士が最適」と語った。 |