4月12日、都内でNPビジネスセミナー2013 相続実務基礎講座を開催した。テーマは「究極の相続7事前・事後対策」で、講師は税理士法人深代会計事務所代表社員の深代勝美税理士。遺産分割協議書の記載上のポイントや遺言書の効用、作成の注意点などを解説した。 また遺産協議書を作成する際に、相続人のうち長男だけが代理人として弁護士に依頼した場合、万が一、次男や三男などが不利益になることがあっても損害賠償請求はできないと注意を促した。 相続が“争族”になってしまう風潮については、「平均寿命が60代といった時代には、相続人たちもまだ希望に溢れる若年層であったため揉めることは少なかったが、最近は時世も反映してか、遺産を巡って骨肉の争いに発展することが多い」と分析する。そのため「相続争いを防ぐためにも遺言作成が必要」と深代税理士は繰り返し述べた。 また相続争いのパターンも、従来は、子どもがいない夫婦で夫の死後に残された妻が夫の兄弟姉妹と対立するパターンや、“隠し子”など相続人以外の人間が絡むことで争う場面が多かったが、最近では「不景気なので相続できる財産があるならできるだけ貰いたい」「家督相続ではなく兄弟は平等である」などの権利意識から相続争いの変化が見られると話した。さらに「この機会に身内の縁を切ることを目的」として、あえて“争族”にするケースも増えているという。 遺言書の効用としては、「財産の内容が分かり、分け方を話し合わずに済み、手続きの手間が省ける」とし、その方法としては、自筆証書遺言と公正証書遺言がよく利用されるとした。 秘密証書遺言には、公正証書遺言と同様に公証人と証人2人以上に提出して証明する必要があるものの、「内容自体を秘密にできる」「費用も公正証書遺言の10分の1ほどでできる」といったメリットがある。作成についても、ワープロやパソコンまたは口述筆記でも可能なため、病身で自筆が難しい人などでもハードルは高くない。ただし、保管は自筆証書遺言同様に遺言者本人が行う必要があるので忘れずにいたい。 デメリットとしては、内容について公証人のチェックが不要なことで紛争のおそれがあることだ。だが秘密証書遺言は、自筆証書遺言よりも確実で公正証書遺言よりも費用も抑えることができると話す。 遺言書作成のポイントでは、「予備的遺言の作成」「相続財産の分割化」「借入金の負担者の記載」などを挙げた。 また「遺贈」と「遺言」の効果の違いについてでは、特定の財産を遺言によって相続させたいなら「相続させる」旨の遺言があると、遺産分割協議などの手続きを経ることなく相続することができると説明する。 反対に「遺贈」では、特定の不動産を相続させたい場合でも、単独申請が許されないので所有権移転登記の申請にも、相続人と遺言執行者または全相続人が共同で申請する必要があると言う。 法的効力はないが「遺言書への思い」も付言事項に記載することでメリットがあると深代税理士は語る。相続対象外の長男の嫁への介護の感謝の言葉や、家族全員への愛情あふれるメッセージなど、「遺留分請求が発生する内容であっても、財産の分け方を決めた理由などが書いてあれば、財産を受ける人も納得しやすくなる」として、法的効力はないにしても“争族”を回避できる策としてこの「故人の思い」を付言遺言書にすることも推奨した。 |