エヌピー通信社　ビジネスセミナー2012

７月５日、都内で「ＮＰビジネスセミナー２０１３相続・事業承継対策基礎講座」を開催し、講師陣の弁護士や税理士に「会社を残す遺言」「子・孫に財産を最大限残す相続税対策」「事業承継“成功”の秘訣」の３テーマについて語ってもらった。

第１部「会社を残す遺言」の講師は、ルネス総合法律事務所の馬渕泰至弁護士。遺言について馬渕氏は、「財産の処分方法を自由に選択でき、円滑な事業承継が可能になることも多いが、一方で紛失や不備のほか、不利益を受ける相続人からの無効主張を受ける可能性もある」として、遺言は必ずしも万能な手段ではない点を強調した。

また、事業承継予定者である長男が先代社長より先に死亡した会社や、事業承継者ではない法定相続人が遺言の作成に疑問を持ったことから争いが生じた一澤帆布工業株式会社の判例を失敗例として紹介した。

遺言の存在を秘密にできる自筆証書遺言に比べ、公証人の目前で作成する公正証書遺言は内容の不備や紛失を防止できる点で確実性は高いことを説明。また、認知症などの意思能力欠如を理由に無効主張を受けないために、ビデオレターや付言事項の記載などの利用を提唱しているという。馬渕氏は、「遺言は生前贈与などでカバーしきれない部分を補う有効な手段」と語った。

第２部「子・孫に財産を最大限残す相続税対策」では、マックス総合税理士法人の武石竜税理士が、相続税の基本的な仕組みや財産評価のポイント、遺産分割、節税対策の具体例などを紹介した。

相続税の税額を考える場合は「一次相続（片方の親の死亡時）だけではなく、二次相続（残りの親の死亡時）まで考えることが重要」と武石氏は強調。二次相続を考えていなかった例として、相続人が二次相続時の被相続人である母親と同居していなかったことから小規模宅地の特例を使用できず、二次相続時に税金が大きく跳ね上がるケースを紹介した。同じ状況に追い込まれないように、同居を続けることや、子どもが持ち家を売却して賃貸住宅に住む方法など、特例を活用するためのポイントを解説した。

また、特例適用を諦めた場合は、納税資金の確保も考えておくべきと説明。「二次相続では相続人は子どもだけになるため、計画的な準備や対策が必要になる」と語った。

相続財産に収益不動産がある場合、法人化にして建物を関連法人に売却し収益を法人へ移管する手法も紹介。税率の優位性や所得の分散などのメリットを紹介したうえで、コスト面を十分に認識して総合的に判断する必要があると話した。

武石氏は、「節税対策の前に、自分の財産に最高何％の相続税がかかるかを知っておくべき」と唱える。自宅の評価額を８０％減額させる小規模宅地の特例の適用を視野に入れ、同居を検討することや、自宅や現金などの遺産分割についても生前から話し合いを持ち、家族全員がお互いの意見を認識しておくことを大切だと語った。

第３部の「事業承継“成功”の秘訣」はマックス総合税理士法人の代表社員・川合宏一税理士が講演。事業承継の基礎知識から自社株の承継方法、自社株評価の仕組みや株価引き下げ対策まで、事業承継を取り巻く複雑な仕組みを図解形式で解説した。

川合氏は「事業承継はヒト、モノ、カネ、タイミングが重要」と唱える。いざ事業承継になって、後継者育成不足のほかに相続を巡る揉め事などが生じたら、最悪の場合、廃業に至ると警鐘を鳴らす。そして、早期の後継者育成と、徐々に経営権を移していく計画的な取り組みなどが大切だと語った。
株価引き下げについては「利益」に着目すべきと解説する。自社の株式が類似業種比準価額方式によって評価される場合、役員退職金を支給することにより「利益」と「純資産」の価額を抑えられて有効だとした。

川合氏は、事業承継は一朝一夕ではできないものであり、しっかりと事前に計画を立てて行動に移すことが重要だと語った。

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