相続人が取得した宅地の評価を最大8割減できる小規模宅地等の特例は、今年から相続人と被相続人との同居要件が緩和された。また、被相続人が終身利用権付きの老人ホームに入所した場合の適用へのハードルも下げられた。この点について赤坂氏は、「終身利用権がない老人ホームに入ると、『10年後に利用できなくなるかもしれない』などの不安が残ることがある。そのため、終身利用権取得時には特例の対象にならなかった以前までの取り扱いは納得しづらいものだったが、見直しで改善された」と評価した。 また、2015年からは80%減額される特定居住用宅地の適用面積が240uから330uにまで拡大される。さらに居住用宅地と事業用宅地がある場合に、それぞれの適用対象面積まで特例を併用できるようになる。赤坂氏は、1uあたり100万円の居住用敷地330uと、1uあたり100万円の事業用宅地400uとを相続した場合、改正前と後とでは2億6400万円の差が出ることを提示。「亡くなるのが今年か来年かで大きな違いが生まれる。あまりにも大きい差が出ないように、相続税の改正はもっと段階的・計画的にやるべき」と、税制改正の在り方に疑問を投げ掛けた。 小規模宅地の特例の実例も紹介。実際にあった事例や、税理士から質問を受けて赤坂氏の見解をまとめた事例が複数示された。例えばA弁護士が、税理士である長男と弁護士である長女と一緒に「法律税務会計事務所」を経営していたケースでは、A弁護士の弁護士業と税理士業への関与の仕方によっては特例の対象にならない可能性があることを指摘した。看板が「法律税務会計事務所」であっても、A弁護士が弁護士業と税理士業の両方に関与せず、弁護士業として確定申告をしていた場合は、長男(税理士)は特定事業用宅地の共有取得の条件(事業継続要件)を満たさない可能性があるという。一方、長女は弁護士として事業承継できるので、特例が適用できるとした。 |