10月3日、相続・事業承継の税務で高い手腕を発揮する城所会計事務所の城所弘明公認会計士・税理士が「事業承継トラブル回避術」と題して講演した。 冒頭、相続支援業務に関する税理士の置かれる状況について説明し、「相続税増税を目前に控え、金融業や不動産業、保険業などがビジネスチャンスと捉えており、さまざまな専門家が参入している。他分野が参入してきたことで、クライアントが相続対策を行ったそのアフターフォローを税理士がしなければならない。そうでなければ税理士の負荷がどんどん大きくなる。相続・事業承継業務に関わる専門家である税理士の責任は過重化の傾向にある」と指摘した。 税理士の責任が過重化している例として、税理士職業損害賠償保険の申請数や訴訟が急増している点を示した。昨年11月に税理士に対して2億8000万円の損害賠償を認めた判決が東京地裁であったが、「税理士は高度な知識と技能を保持していると持ち上げ、クライアントからの指示がなくても自己の裁量でクライアントの趣旨に沿うように事務処理をすべきという信じられないもので、判決は税務の範囲を超えていた」とし、税理士の責任範囲が広く、重くなっていると分析した。 また、城所氏は「事業承継の課題と落とし穴」として自社株式の遺産分割や相続時精算課税制度のポイントなどについて解説した。特に注意したいのは、自社株式を数人が株式を共有した場合。共有持分の価格に従って過半数を持って定めるとなっていることだ。「仮に3兄弟で、後継者が長男であっても弟2人が結託すればほとんどの株式を弟2人が持つことが可能になり、経営が不安定になる可能性がある」と述べ、株式については遺言を書いて後継者が株式を持てるようにしておくべきと助言した。 このほか一般社団法人を活用した相続対策について言及。「税務当局は一般社団法人を使った相続対策に注目している。注意してほしいのは租税回避の目的でないようにすること。どういうことを目的にして一般社団法人をつくるのかを明確にする必要がある。租税回避のためにつくった一般社団法人は設立趣旨などを税務当局が調べると思うので気をつけてほしい」とアドバイスした。 |