10月24日、奥村税務会計事務所の奥村眞吾氏は、信託の特性を活かした相続税の対応策について解説した。 そのなかで民法上の代理や委託、遺言などの財産管理制度と信託制度との最大の違いについて「委託者の財産の名義が受託者の名義に移転すること」と述べ、信託の多様性を示す具体例を紹介。 委託者が自ら受託者になる「自己信託」では、企業の財務改善や不動産の流動化に期待できるという。例えば、自社の売掛金や未収金などの債権を証券化する際も、「企業自らが受託者となり受益権を投資家に販売できるため、コストをかけずに資金調達が可能になる」と語る。また自己信託は「不振部門のリストラ策としても活用ができる」とさらなるメリットを強調した。企業内の赤字部門を一時的に自己信託し、受益権を関連会社などに譲渡することで、「業績不振の部門の収益が悪化しても本体には影響が出ない」という。現在、ソニーやパナソニックなどでも盛んに行われている手法として紹介した。受益者の死亡後も新たに受益者を連続して複数設定することができる受益者連続型信託では、後々まで委託者の思い通りの資産承継の有効策になると紹介。ただ、新たな受益者には相続税が課税される注意点も加えた。 さらに奥村氏は、信託の運用に関する課税についても触れた。受託者が信託財産を管理処分することによって発生した利益は、収益発生時に受益者に課税される「受益者等課税信託」を信託税制の基本(パススルー課税)と述べ、ほかには「集団投資信託」「法人課税信託」の3つの課税区分を紹介した。奥村氏は「パススルーになってはじめて税制上の恩恵を受けることができる」と繰り返し述べ、法人であれば「いかにしてパススルー課税となる受益者等課税制度を適用するかが重要」と説いた。 |