10月24日、遠山敏之税理士は講座の冒頭で、遺贈には大きく分けて「特定遺贈」と「包括遺贈」の2種類があることを紹介。 ある財産を具体的に特定して遺贈する「特定遺贈」では、受贈者は遺贈者の債務を負うことはないのに対して、遺産の全部または一部を一定の割合で示して遺贈する「包括遺贈」では、受贈者は遺贈者の債務を負担することになる。 この包括遺贈を放棄する際には、家庭裁判所での申述手続きが必要であると民法で定められているが、遠山氏は、「国税庁の質疑応答事例では、分割協議を行って遺言と異なる遺産分割をした際、『包括受贈者は(手続きがなくとも)事実上放棄したとみて差し支えない』と書いている」と指摘し、この差異が実務上問題になりうるかもしれないとして注意を促した。 法人に対する遺贈は、受遺法人に対して所得税と法人税の課税が生じる。贈与税・所得税・法人税のトリプル課税によって税負担が増すこともあり、相続税対策としての効果は期待できないと考えられている。だが遠山氏は「債務免除や繰越欠損金の適用をうまく使うことによって、相続税対策として活用できるケースがある」と述べた。 債務免除がされる要件の説明として、遺言者が主宰する法人へ貸付をしていて、その法人が債務超過の状態が続いているケースを紹介した。貸付金は相続財産に含まれるが、回収が著しく困難と見込まれるときは、貸付金の金額は相続財産に算入されない。また、価額減額できる要件を満たす法人の状況でない場合でも、実際には回収ができないという状況であれば債務を免除して法人の繰越欠損金と相殺させることができると解説した。他にもさまざまなケースを解説し、「相続開始後に回収可能性がないようであれば、その金銭債権は遺贈することで、全額を相続課税価格の対象とならないようにすることが税務上効果的ではないか」と提案した。 |