医療法人の税務・相続・事業承継の支援経験を多数持つ税理士法人青木会計の青木惠一税理士が「認定医療法人と相続対策」をテーマに、今年10月1日に始まった医療法人の納税猶予制度を説明。出資者がそれぞれの出資額に応じた払い戻しを求める「持分がある医療法人」から、「持分がない医療法人」への移行を目指すことで、贈与税・相続税の納税猶予や、経営安定化資金の融資(一施設あたり2億5千万円)をWAM(独立行政法人福祉医療機構)から受けられるメリットがあると紹介した。 納税猶予については、相続開始後でも相続税の納税期限である10カ月以内に認定を受ければ納税猶予が受けられることなどを挙げ、「かなり使い勝手がよい制度」と述べた。一方で、「10カ月あるから相続が開始してから考えればいいだろうという考え方は非常に危険」と警告。持分ありの医療法人が持分なしの医療法人に移行しようとする際には出資者から財産(持分)を放棄してもらうための説得が必要となり、調整には時間がかかる。また実際に申請してから認定を受けるまでにも1カ月ほど時間がかかると指摘し、「準備期間として10カ月はむしろ短いくらい」として事前準備の大切さを説いた。 納税猶予を受ける際には担保提供が必要となるが、青木氏は「出資持分をすべて担保にすれば問題ない」と解説。「評価額が下落して担保割れが起きても問題にならない」とする厚労省担当者の見解を紹介し、「めったにない好条件」と評価した。ただしその場合でも未分割の持分は対象にならないとして、出資者にきちんと納得してもらった上で「持分がない医療法人」への移行を目指すことが何より重要だと強調した。 青木氏は、実際に移行するまで3年間の猶予が与えられていることに着目して、その間に持分の評価額を落として贈与税負担を抑えるなど、やり方次第では大きな節税効果が見込めると語った。さらに、「納税猶予や融資を受ける必要性が差し当たってないのなら、無理に移行する必要はない」として、移行があくまで「任意」であることを強調した。その他にも、移行申請する際に提出する書類の具体的な記載方法や申請の際の留意点など、実務に役立つノウハウが多数紹介した。 |