資産税中心の税務・コンサルティングで高い手腕を発揮している阿藤芳明税理士(税理士法人エーティーオー財産相談室代表)が「相続実務のツボ」をテーマに、過去に経験した「大失敗」を、税理士へのアドバイスを交えながら紹介した。 はじめに、後妻の死をきっかけに起こった先妻の子どもと後妻の子どもとの間での相続トラブルを紹介。後妻は亡くなる前に自筆証書遺言を作成していたが遺言書には記載漏れがあった。これに対して遺言書の内容に不満を持つ先妻の子どもが遺言の無効を申し立てた。阿藤氏は、「相続案件は深刻なものほど一発勝負」としたうえで、遺言書の記載漏れを防ぐためにも、「上記に記載のない財産については、総てを○○に相続させる」という一文を入れることをアドバイスした。 次の事例では、居住用の土地の収用に際して控除の適用を誤った件を紹介。当初は農地と居住用の土地を同時に売却しようとしたが顧客の要望で先に農地のみを売却した。この時、すでに農地の収用に対して5000万円の控除を適用済みだったが、別々の収用であっても控除は可能であると判断を誤り、3年後に居住用の土地を売却したという。阿藤氏は、「ミスを減らすためにも何重にも及ぶチェックが必要」と語った。 その他には、相続直前に行った大規模な自宅改修が争点となった事例を紹介。システムキッチンに1200万円、台所の床工事に180万円、フローリングや床暖房には300万円という大規模な工事で税務署の調査が入ったが、最終的に固定資産評価の評価額に変化はないと判断され事なきを得た。 阿藤氏はまた、「どうすれば資産税の対応だけで税理士法人が成り立つのかよく質問されるが、経営をするには情報発信しかない。手あたり次第に情報発信してきたことがこの24年の成果につながった」と述べ、自分から積極的に行動することの必要性を述べた。 |