多くの相続・事業承継対策を提案してきた白井一馬税理士(白井税理士事務所)は冒頭で、「会社の状況や後継者の変更など、あらゆる変化に対応できる柔軟な事業承継対策が求められている」と述べ、時代に合った事業承継ツールを検討する必要性を説いた。その上で、白井氏は社団法人と信託の活用を提案した。 一般社団法人は比較的設立が容易で、さまざまな相続スキームの利用が期待できると紹介した。株式会社では内部留保を蓄えると株価が値上がりし、株を保有する個人の相続財産も増えてしまう。しかし一般社団法人は持分がないため、内部留保を蓄えたとしても相続税の課税対象にならない。また自宅を社団法人名義に変更しておくことで、もし会社が倒産したとしても債権者の差し押さえから財産を隔離する効果もあるという。 信託については、民法上の契約は当事者の死亡によって終了するのに対し、信託は委託者が死亡しても効果が続くことや受託者の裁量で節税が可能であることなどを挙げて、「信託には契約でなしうることの100倍の可能性がある」と語った。 社団法人と信託を組み合わせた、親族株主に株式が分散している場合に一般社団法人への信託を利用して議決権を集中させるスキームについても解説。「受益権はそれぞれの親族が持ったままで、株主としての権利は社団法人が行使でき、無議決権株式を発行したのと同じ効果がある」と利点を挙げた。白井氏は、「一般社団法人と信託は組み合わせることでさらに価値が高まる」と『社団法人×信託』の可能性の大きさを述べ、事業承継対策への積極的活用を促した。 |