国税OBで資産税務のスペシャリストである遠山敏之税理士(遠山税理士事務所)は「相続税と“債務の承継”」をテーマに、@民法における債務の承継、A国税債務の承継、B相続税債務の留意点――の3つの観点から解説した。 民法における債務の承継では、財産とともに債務を相続する場合と財産のみを相続する場合を解説。民法の規定では被相続人の死亡によって相続人は財産のほかに債務についても承継するとされているが、遺言の有無や遺産分割協議によって債務を承継するかしないかが変わってくると説明。借入金など原則として遺産分割の対象にならない債務でも、実務ではあらかじめ金融機関の承諾を受けることで遺産分割協議の対象になるなど、実務と民法の規定が異なる点が多くあると述べ、「あらかじめ債務者の意向を聞くなど柔軟に対応していく必要がある」と話した。 国税債務の承継では、相続税や所得税をはじめとした納付義務の承継について解説。特に注意が必要な点として、指定相続分(被相続人が遺言によって指定した相続分)が相続分の指定なのか、遺産分割方法の指定なのかが問題になる事例を説明。受遺者が相続人の場合に起こるこの問題に対して、「遺贈」と「相続」を混同しないように注意を促した。 相続税債務の留意点では、債務控除の対象にならない債務について解説。被相続人の債務で相続開始の際に存在するもの、被相続人の葬式費用などが債務控除の対象となることを説明し、被相続人が死亡する前に賦課決定され、死亡後に賦課決定通知された地方税や固定資産税は、相続人の確定申告の際に必要経費に算入できる点に注意が必要だと述べた。 |