多くの相続・事業承継対策を提案してきた白井一馬税理士(白井税理士事務所)は、「社団法人×信託 究極の対策」としたタイトルで、【応用編】をテーマに講演した。 一般社団法人につき白井氏は、「誰でもすぐに作れるというイメージが現在では定着した」と、一般化してきていることを報告。ただし、「その特性として、社員の支出費で運営されるため持分がない法人として余剰金の分配ができないと思っている人が多い。定款に定めがなければ設立社員が残余財産を取り戻すことは実は可能」と見解を示し、「定めがない場合は、社員総会決議で決定でき、社員に財産を引き戻す決議も認められる」と語った。 一般社団法人の普及に伴い財産移転で活用を図るケースが増えているが、白井氏は「特定の人間に利益を与えないなどの要件を守らないと、租税回避行為にあたる可能性がある」と指摘し、「社団法人の財産と個人の財産とが完全に切り離され、財産移転の目的は公益な活動をするためであることは明確に示す必要がある」と注意点を述べた。 その他の利用事例では、倒産回避のために自宅を一般社団法人名義にして賃借物件として居住することや、値下がりした会社の土地を一般社団法人に売却して譲渡損を実現したことなどを紹介。一般社団法人を資産管理会社として利用する際は、「全ての株式を移転するのはリスクが大きく、一般社団法人を節税対策と考えるのは危険。極端な節税対策に走るのではなく、他の手法と組み合わせて相続税対策を行うのが基本だ」と語った。 信託については、さまざまな活用例を掘り下げて活用範囲を示し、その鉄則を「シンプルな信託活用」と定義し、信託スキームの90%を占める自益信託と遺言代用信託は実務でも使用頻度が高い手法と紹介した。特に遺言代用信託については、遺言と同様の目的が達成できる手法であるとした。 |