国税OBの川手今朝人税理士(さくら税務実務研究所・研究員)は、これが本セミナーへの初登壇となった。平成25年まで「調査する側」の“現役”として活躍していた豊富な経験から、数多くの事例をもとに、“古巣”が実施する相続税調査について、その最新事情を語った。 平成27年から控除額の引き下げと税率の引き上げによって相続税が増税されたことについて「路線価が上昇したことで、土地の評価額も当然ながら上昇した。相続税の増税のタイミングと地価上昇のタイミングが重なったことで、納税者の重税感はいやでも増すことになるだろう」と、増税の時期の悪さを指摘。これによって必然的に「相続税の課税対象者が増加すると予測されるが、それまで相続税とは無縁だと思っていたひとまで対象になる可能性が高くなったのだから、無申告や過少申告といったケースも多くなるだろう」と語り、税理士が手腕を発揮する機会も増えるものと予測した。 相続税調査は、主として「申告額が過少であると想定されるものや、申告義務があるにもかかわらず無申告となっていることが想定される事案について実施される」とし、「無申告の事案は、過少申告のケースよりも厳しい姿勢で調査に臨んでいる」と説明。とくに力を入れるようになったのは「海外資産と贈与。相続税調査など、あらゆる機会を通じて財産移転の把握に取り組んでおり、無申告事案を中心に海外資産と贈与の動きに目を光らせている」と語った。 |