これまで多くの中小企業の事業承継に関わってきた城所氏は、会社の状況、承継計画の内容、経営者の家族関係などによってトラブルの内容は様々であるとして、事業承継のポイントを「経営・法律・税務・金融」の4つに分類。税理士だからといって税務だけを見るのではなく、4分野を合わせて総合的な承継の成功に導くことが求められる役割だと強調した。そのためには弁護士や不動産鑑定士、行政書士など他業者と協業関係を結んだり相談できる知人を作ったりしておくことを勧めた。城所氏が実際に遭遇した承継トラブル事例の数々に参加者らはいちいちうなずき、熱心にメモを取る姿が見られた。 2018年4月に始まったばかりの「事業承継税制の特例」について、城所氏は「いわば後出しじゃんけんのようなもの」と語り、「こんな税制ができるなら苦労して持株会社を作る必要はなかった」と、新特例のメリットの大きさを強調した。なかでも、新特例は従業員などへの親族外承継に力を発揮すると紹介。引き継いだ自社株の10割に税優遇が適用されることで、親族外への相続に適用される「相続税の2割加算ルールが影響しなくなったことや、本来なら子や孫にしか使えない相続時精算課税制度も親族外承継に利用できるなど、多くの中小企業で後継者の負担を減らすことができることを解説した。 一方で、特例のために複数の兄弟全員に代表権を持たせなければならないことなどを挙げ、税優遇ありきで承継計画を作ることは将来のトラブルになりかねないと注意を促した。 |