信用保証協会に支払う保証料を上乗せすると経営者保証が不要となる新たな制度が、3月15日にスタートした。社長個人が会社の債務の連帯保証人となる経営者保証は、中小企業の事業拡大や事業承継を妨げる一因になっているといわれる。新制度が経営者にとって助けになることが期待される一方で、保証料を上乗せしてまで解除する必要はないとの声もあり、どれだけ利用されるかは未知数だ。
新制度は、信用保証協会が提供する債務保証に利用できる。条件となるのは、(1)過去2年間(法人の設立日から2年経過していない場合はその期間)に決算書等を申込金融機関の求めに応じて提出していること、(2)直近の決算で代表者への貸付金等がなく、かつ、代表者への役員報酬、賞与、配当等が社会通念上相当と認められる額を超えていないこと、(3)直近の決算で債務超過でないこと、または直近2期の決算で減価償却前経常利益が連続して赤字でないこと、(4)上記(1)と(2)については継続的に充足することを誓約する書面を提出していること――というこれら全てを満たした上で保証料を上乗せすれば融資時に個人保証を付けずに済む。
上乗せする保証料は、(3)の要件の両方を満たすなら本来の保証料率に0.25%上乗せ、いずれか一方を満たすか法人の設立後2事業年度の決算がないなら本来の保証料率に0.45%上乗せとなる。また制度開始から3年間の時限措置として、上乗せする保証料の一部を国が補助する。
日本の中小企業の4割が信用保証制度を利用しているが、そのうち7割で経営者個人が会社の連帯保証人となる「経営者保証」を提供している。経営者保証があると大胆な経営判断ができず、また債務を引き継ぐことになる後継者が尻込みするなど、中小企業の成長を妨げているとの指摘がかねてよりあった。今回の新制度でそうした不安を取り除き、生産性の向上につなげるのが国の狙いだ。
ただ制度の実効性に懐疑的な声もある。銀行取引コンサルタントの上田真一氏は、「将来の万が一の不安を取り除くために保証料率を上乗せしてまで保証を外そうという経営者は少ないのではないか。また制度に特別なメリットを感じていない金融機関が率先して勧めることは考えづらく、周知がなかなか進まない可能性もありそうだ」と指摘する。