複雑すぎる「定額減税」  自治体からは不安の声

 2024年度税制改正法案が3月28日、参議院本会議で可決、成立した。所得税と住民税から1人当たり計4万円を減税する定額減税の6月開始も決まった。ただ、減税と給付を組み合わせた複雑な事務作業に対する自治体の不安は残ったままだ。
 岸田文雄首相はこの日の記者会見で「官民が連携して、物価高を上回って可処分所得が増えるという状況を確実につくり、国民の実感を積み重ねていく」と強調した。
 連合の24年春闘の2次集計では、中小企業でも平均賃上げ率が4.5%に達した。定額減税は集中するボーナス期を意識して6月から始まり、手取り給与の上昇を実感させる狙いがある。政権が目指す「賃金が持続的に上がるという好循環」を実現するために着々と足固めを進める。
 一方で、減税と給付の実務を担う企業や自治体は、税務や給与計算システムの改修といった準備に追われ、事務作業の複雑さに困惑している。中でも自治体の担当者が頭を悩ませているのが「調整給付」の仕組みだ。
 定額減税は、所得税と住民税所得割を課税されている納税者とその扶養家族が対象となる。ただ、一部の低所得層は納税額よりも減税額が少なく、減税額が余ってしまう。この残額を現金給付するのが調整給付で、実施主体の各自治体は給付額を計算しなければならない。
 しかし、24年分の所得税から引き切れなかった減税額が分かるのは、25年の2~3月の確定申告が終わってからだ。給付はその後の住民税が確定する5~6月以降となり、野党から「足元の物価高対策としては遅すぎる」と批判された。
 この問題の解決策として政府が示したのが、デジタル庁による「推計所得税額等算定ツール」(仮称)の開発だ。自治体が持つ住民税などの情報をアップロードすれば、自動的に今年の所得税額が推計される。自治体は結果を元に給付の準備を進め、今夏にも調整給付を始められるという。
 ただ、ツールの完成は5月末。一部自治体の担当者からは「実際に使えるかは完成したツールを見てみないと分からない」と不安視する声も上がっている。


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