不動産オーナーの資産運用の新たな選択肢として“エレベーターリース”が注目されている。1棟マンションなどの保有物件に設置されている減価償却済みのエレベーターを専門事業者へ売却し、その後はリースによって従来通りに利用していくスキームで、最終的には買い戻すことも、リース契約を再度更新することもできる。減価償却済みの資産を現金化して修繕費用に充当するなど、新たな資金調達手法として活用することも可能だ。
エレベーターの法定耐用年数は17年。それを経過すれば減価償却が終了する。エレベーターリースは、そうした減価償却済みのエレベーターを専門事業者が購入し、そのうえでリース契約を物件オーナーと結ぶ。リース契約期間中の保守・メンテナンス費用はオーナーが負担する。将来的に「購入選択権」を行使できるように設定しておけば、オーナーが買い戻すこともできる。
専門事業者であるエレベーターアセットのシミュレーション(東京・新宿区)によると、東京23区内で築25年・4階建て450㎏のエレベーターの場合、同社が物件オーナーに一括で支払う買取価格は237万6千円(税抜、以下同)。オーナーは売却後、同社と10年間のリース契約を結ぶ。月々のリース料は1万4千円で、10年間の支払総額は168万円となる。リース期間終了時の購入選択権行使額は17万3280円。売却時に受け取った金額からこれらを差し引いても、オーナーの手もとには52万2720円が残る計算だ。つまり、同社から支払われた買取価格の11%~20%程度の収益が期待できる。ただし、当然ながら一時的に得た売却益には税金が発生してしまうので、それを避けたいのならば赤字の決算期にあわせての利用や、同じ事業年度内にまとまった支出が計画されているケースでの活用を検討したい。
当然、売却時点での現金化のメリットも大きく、調達した資金を修繕費用に充てるなど、使途はオーナーが自由に判断できる。
エレベーターアセットではリース事業に加え「エレベーター広告」のスペース提供も行う。オーナーから買い取ったエレベーターの内壁などにポスターを貼り付け、広告収入を得るという仕組みだ。マンションの住人など多くの人の目に触れるスペースであることから、広告効果は高いという。これにより、不要なポスティングチラシを減らす効果も期待できる。エントランス・集合ポスト周辺の美化が保たれることで、物件価値がアップして空室が減り、家賃収入のアップにもつながることだろう。広告クライアントとしては、ポスティング行為に対するマンション住民からの苦情や、不法侵入を疑われての通報・クレームなどから解放される。加えて、紙資源の無駄を省くことでゴミの削減と、環境に配慮した企業としてのイメージ向上にもつながる。