粉飾決算とは、企業が悪化した財務状況を隠し、まるで経営が健全であるかのように見せかけた決算書を出すことをいう。偽りの数字をベースに今後の事業計画などを示して銀行筋を欺いて融資を受けるなど、株主や取引先、顧客までをも騙す極めてタチの悪い犯罪だ。
一方で、粉飾は結果的に利益を多く見せる行為であるため、税金面をみれば本来より多くの儲けを申告していることになる。つまり過大納付になっている状況だ。そこで粉飾を目論んだ会社で悪事がバレてしまったときには、「これ以上、多い儲けの姿を税務署に見せ続けておく必要もない」として、納め過ぎた分の還付請求を行うだろう。しかし、こうしたケースでは、還付はすぐには認められないルールになっている。
通常であれば税金の過大納付分は、国税当局が定める手順を踏めばすぐに還付を受けられる。しかし、故意に粉飾をした会社にもこのルールを適用すれば、利益を本来より上積みした決算書(申告書)を作って銀行から有利な融資を受け、その後に税務署に請求して還付金を受け取るといった〝裏技〟が使えてしまう。恥も外聞もない会社であれば、それを繰り返して運転資金を回し続けるということも不可能ではない。そのため、粉飾などの仮装経理をした会社に限っては、納め過ぎた分をすぐには受け取れず、5年程度をかけてようやく取り戻せるというルールが適用されている。
ひとたび粉飾に手を染めれば、翌年度の決算がさらに苦しくなり、それをごまかすためにまた嘘を塗り重ね、粉飾から抜け出せなくなる。そして粉飾がバレたときには、世間からは冷たい目で見られ、株主は離れていき、銀行の信用を失い、多く納めた税金はなかなか返してもらえないと何重苦にもなる。ウソの決算はくれぐれも慎みたい。