年末に向けて、この一年に溜まった不要な物の処分を始めている人も多いだろう。だが溜まっていたレシートについては、捨てるのを少し待ってほしい。今年に市販薬を買う機会が多かったという人は、一部が税優遇の対象となる可能性がある。
「セルフメディケーション税制」は、一部の市販薬について年間の購入費のうち1万2千円を超えた部分を所得から控除するという制度だ。家計が同じであれば本人分だけでなく家族全員分を合計することも可能で、上限は購入費用10万円。つまり最大で8万8千円が控除されることになる。
同税制の税優遇を受けるためには確定申告が必要で、その際には出費を証明するレシートか領収書の添付が必須だ。最近買ったものであればドラッグストアによってはレシートを再発行してくれるかもしれないが、春に買った花粉症の薬などについて、今から購入の事実を立証して再発行を受けることは不可能に近い。一年分のレシートをチェックするこの時期に、税優遇の対象となる薬のレシートはしっかり分けて保存し、2月に始まる確定申告期に備えたい。
同税制を巡っては、2022年に大幅な見直しが講じられた。それまでは、かつて医療用だったのが市販医薬品として承認された「スイッチOTC薬」のみが対象だったが、それ以外にも薬効が認められた「非スイッチOTC薬」も制度の対象となった。その結果、現在では対象医薬品の種類はスイッチOTC薬が約2700に比べて、非スイッチOTC薬が約4000と、後者のほうが多くなっている。スイッチOTC薬か否かにかかわらず、セルフメディケーション税制の対象である薬には専用のマークが付き、レシートの商品名の横に付いた「★」マークなどで見分けることができるので覚えておきたい。
そして、セルフメディケーション税制は従来の医療費控除との選択適用となっている。医療費控除のほうは年間の医療費が10万円を超えた時に超過分が所得から差し引かれ、どちらを使ったほうがトクかは条件によって異なる。一つの基準として、おおむね医療費全体で18万8千円を超えるようなら、従来の医療費控除のほうが有利、それ以下ならばスイッチOTC薬以外の医療費が8万8千円以下の時はセルフメディケーション税制、8万8千円超なら従来の医療費控除の控除額が大きくなる。