自然災害により被害を受けた人は、確定申告の際に「雑損控除」を適用することで損害分を所得から差し引くことができる。雑損控除は、自然災害で住宅や家財に損害を受けた時に、本人または生計を一にする親族を対象として、「損害額から保険金や損害賠償金を差し引いた金額-所得の10分の1」か「損害額のうち、被災後の取り壊しや土砂除去などにかかった費用-5万円」のうち、多いほうの金額を差し引けるものだ。
控除の対象となる金額は、地震で壊れた家財や、水害で流出してしまった現金というような直接的な被害だけではない。壊れてしまった家屋の再建費、泥の除去費用、ガレージの修繕など、災害に遭う前の状態に戻すための費用も幅広く含まれている。雑損控除の適用を受けるためには、確定申告書に被害額などを記載し、併せて災害のための支出を証明する領収書などを添付すればよい。
注意点として、壊れた家をせっかく修理するのだからと元の状態より良いものにアップグレードしてしまうと、その部分については雑損控除の対象とはならないことだ。国税庁のQ&Aでは、「被害を受けた住宅等について行う原状回復のための修繕費用は雑損控除の対象となります」とする一方で、「被災直前よりその資産の価値を高め、その耐久性を増すための支出と認められる部分については、雑損控除の対象となる損失の金額には含まれません」と答えている。
これは会社の税務申告でもたびたび判断に悩む、修繕費と資本的支出の話と本質は同じだ。ただし会社の場合、資本的支出とみなされた部分についても長年にわたって損金算入していくことが可能だが、個人は事業者でない限り減価償却の仕組みはないため、何の税制上の措置も受けられない。今後生活していくために必要ならいいが、「どうせ雑損控除で税金が戻ってくるだろう」などと思いこんで高価なリフォーム工事を実行してしまうといらぬ出費になる可能性がある。
なお結果的に資産価値を高める工事をしたとしても、そのなかに原状回復部分が含まれていることもあるだろう。このように原状回復部分と資産価値を高める部分の区分が難しい時には、その工事費用の総額のうち3割を原状回復、7割を資産価値を高める部分として申告することが認められている。