本業とは別に不動産管理法人などを持っている経営者は、家族を法人の非常勤役員にして報酬を払うことがある。その際、報酬額が過大と判断されてしまうと否認される恐れがある。
1979年に下された最高裁判決では、役員報酬が損金に算入できる範囲を超えるほど高額だったとの税務署の判断を認めている。この事例では、男性が設立した会社の取締役に長女を据え、役員報酬として年額93万円を支払っていたが、課税庁がそのうち60万円を超える約3分の1の部分について否認した。長女は取締役就任当時18歳で大学在学中であり、学業の余暇を利用して経理関係の帳簿の整理、自動車の運転など実質的な業務にも携わっていた。
このケースで裁判所は「①長女の知識、経験、②取締役として就任間もない事実、③勤務状況、職務内容、④会社経営に参画する程度、⑤他の取締役、使用人に対する報酬、給与の額――などを併せて考えると、長女に対して支払われるべき報酬の客観的相当額は、会社設立以来の非常勤取締役だった他の役員に対する報酬額(年額60万円)以上にはならない」と判示した。この額をそのまま参考にはできないが、非常勤役員の報酬額の相場を考える上で押さえるべきポイントとなりそうだ。