不動産を売却して得た利益は「譲渡所得」として、所有していた年数などに応じて所得税が課される。その際には、不動産を得るためにかかった取得費用と、売却時に掛かった譲渡費用を差し引ける。
一般的に譲渡費用として認められる支出は、不動産業者などに支払った仲介手数料、売買契約書などに掛かる印紙税のうち売主として負担したもの、貸家を売るに当たって店子に支払った立退料、土地を更地で売るために建物を取り壊した際の取り壊し費用や建物の損失額などが該当する。それ以外にも、一度売買契約を結んだ後でさらに高く買ってくれる相手が見つかったために、先の契約者に対して支払った契約解除の違約金なども譲渡費用として認められる。
一方で、銀行などへの抵当権を抹消するための登記費用、譲渡所得を申告するための税理士費用、譲渡後に引っ越すための費用などは譲渡費用に含まれない。物件の期限前弁済手数料も対象外。
譲渡費用に当たるかどうかは、おおむね、その譲渡を実現するために最低限必要な支出だったかどうかが基準となる。ただ、登記費用やごみ処理費用などは個々の事情によって該当するかどうかが変わり、その境界線は明確ではない。譲渡費用に含められるかどうかで税負担が大きく変わるため、税理士などと相談して間違いない申告を心掛けたい。