会社から従業員に自主退職を促す退職勧奨で、二つ返事で「はい、分かりました」と事が運ぶことを期待してはいけない。働く者としては職を失うのだから当然で、当該社員から「なぜ自分が、なぜ今?」との反発は想定内にしておく必要がある。退職勧奨に絶対に必要なのは「正当な理由」。「個人の売上が低いから」「やる気がなさそうだから」「人が余っているから」といった企業サイドの一方的な理由では、退職の強要となり、裁判では損害賠償の対象にもなり得る。退職勧奨にあたっては1度の面談で結果を引き出そうとせず、また本人が拒否しているのに執拗に退職を求める行為は避けたい。
退職強要や不当解雇などと見られないため、言葉も慎重に選ばなくてはならない。たとえ経営者の本音であっても、「育休を取るなんて悠長な職場じゃない」などは絶対のタブーワードだ。こうしたパワハラ、マタハラまがいの言葉は、退職強要を超えて男女雇用機会均等法や育児・介護休業法にも明確に違反し、罰則の対象となる。同様に、労働組合活動を理由とした退職勧奨も労働組合法をはじめ各種労働法規に抵触するおそれが高い。もちろん、退職勧奨の拒否を理由とした解雇が正当なものと認められるケースは少ない。解雇が難しいから退職勧奨をしていることは忘れずにいたい。