申告納税方式はマイナンバーで消えていくのか  相互信頼で成り立つ時代が終わる?

 国が納税者から税金を徴収する方法には、大きく分けて「申告納税制度」と「賦課課税制度」がある。前者は納税者自身が税額などを計算して納める方法で、後者は国が税額を計算して納税者に通知し、納税者はその通りに納めるというやり方だ。
 戦前は、税務署が一方的に所得を査定して税額を納税者に告知していた。だが戦後になり、従来のあらゆる制度を抜本的に見直すなかで税制にも民主化の道が開かれた。それが申告納税制度だ。
 国税庁は申告納税制度について、「納税者が高い納税意識を持ち、法律に定められた納税義務を自発的にかつ適正に履行することが必要」とする一方、「納税者が自ら正しい申告と納税が行えるよう、租税の意義や税法の知識、手続についての広報活動や租税教育、税務相談、確定申告における利便性の向上」に努めるとしている。いわば申告納税制度は、税を納める納税者と税務行政を運営する国の信頼関係で成り立っている。
 だが近年は、かつての賦課課税制度に近づくような状況にある。例えば住民税は、かつては会社に勤務する従業員が自分で納めていたが、今では「特別徴収」という会社による天引きが一般的となっている。
 今やネットバンクや会計ソフトを駆使すれば、何の手も加えずに税額が計算され、確定申告書類を作成できるようになった。マイナンバー制度がさらに普及すれば、国による納税者の所得捕捉が飛躍的に進み、自動的に所得から税額を算出、通知することも遠い未来の話ではないだろう。
 毎年の年末調整や確定申告で苦労している納税者にとってみれば、進みつつある〝賦課課税制度化〟がありがたい一面はある。だが戦後の民主化によって申告納税制度を定着させた経緯を思えば、すべてを国に「おまかせ」していいのかは一度考えてみるべきだろう。


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