報酬はなるべく多くほしいが、報酬額を上げれば当然その分だけ所得税も上がってしまう。かといって報酬を絞れば、会社の利益がそれだけ増えて法人税が上がってしまう。そんなジレンマで、自分の報酬をどれほどに設定するか悩んでいる社長さんも多いだろう。そこで会社の税金を減らしつつ、社長個人の税金を増やさずに老後のための資産形成もできる「小規模企業共済」の活用を考えたい。
小規模企業共済は、常時使用する従業員が20人以下(サービス業、小売業は5人以下)の会社役員か個人事業主が入れる共済制度で、社長本人以外にも、共同経営している家族従業員が入ることも可能だ。加入メリットとして、掛け金は全額が所得から控除され、さらに共済金の受取時には一括であれば「退職所得」として一定額までは課税されず、また課税されたとしても給与所得に比べて格段に低い税率が適用されることがある。さらに年金として受け取れば「公的年金等の雑所得」となり、これも1年当たりの受取金額を抑えることで非課税にすることができ、本人が亡くなって遺族が受け取れば「相続人の数×500万円」の非課税枠が使えるという、多重の税優遇が魅力だ。
掛け金の上限は月額7万円で、その範囲内で小刻みに設定することができる。仮に月額7万円の掛け金を社長が支払い、その分を役員報酬に上乗せすると、社長個人としては増額された月7万円分がそのまま全額控除されて税金は増えず、老後の資産形成ができる。さらに会社としては、月7万円が給与支払いとして損金になり、年84万円の利益が減ることになる。個人と法人で、ダブルの節税につながるわけだ。
メリットの大きい小規模企業共済だが、もちろん注意すべきポイントもある。一つは、節税効果だけを重視して掛け金を多めに設定すると、あとで支払いが厳しくなる可能性がある。掛け金は加入後でも減額させることができるが、減額した部分がそれ以降まったく運用されずに放置されてしまうという特徴がある。つまり掛け金を7万円に設定して5年間支払い、その後4万円まで下げると、差額の3万円分については、それまで5年間支払ってきたにもかかわらず、その後共済金が支払われる時まで出金も運用もできない“死に金”となってしまうわけだ。
また加入期間が短いと元本割れしてしまうケースがあるなど、気を付けるべき点もある。それでも小規模企業共済は、加入要件さえ満たせるなら入っておいたほうがいいおトクな制度と言えるだろう。