毎年この時期に増えるのが、税務署員を装って現金自動預払機(ATM)で現金を振り込ませる「振り込め詐欺」だ。近年では現金を直接狙うだけでなく、勤務先や取引銀行の情報を問い合わせる事例や、未公開株・社債の取り引きに関連して銀行の口座情報を聞き出そうとする事例など、さまざまな被害が報告されている。その手口も複数人がそれぞれ税務署、警察、金融機関を装うなど複雑さを増していて、「自分だけは大丈夫」と思わず、疑ってかかる心構えが求められる。
国税局や税務署が金融機関の口座を指定した上で税金の振り込みや還付金の支払いのためにATMの操作を求めることは絶対にない。また本物の税務職員が税務調査や滞納整理を行う場合、必ず顔写真付きの身分証明書を携帯している。少しでも怪しいと思ったら身分証明書の提示や、直接税務署への問い合わせによる確認をすべきだ。仮に本当に税務署からの連絡であったとしても、一度「顧問税理士に相談して折り返し連絡します」と答える習慣をつけておくことも詐欺被害の防止には役立つ。詐欺ばかりは、いかに税理士が有能であろうとも、納税者本人が直接対応してしまうなどの場合には防ぐことができない。
詐欺の被害は盗難などと異なり、雑損控除などの救済手段も適用されないので、被害に遭ってしまうと泣き寝入りせざるを得ない。警察や国税もこの時期には過去の被害例などを挙げて注意を呼び掛けているが、いたちごっこのように詐欺の手法は年々新しく、また高度化している。重ねて言うが、「自分だけは大丈夫」と思い込まず、不審な点がなくても必ず家族や顧問税理士、あるいは警察などに確認し、その上で周囲と相談して対応することが重要だ。