損害賠償金分割払いは支払年の損金に  債務確定時の原則に従わず

 業務上のミスによって、損害賠償金を支払うことになってしまった。ただ賠償額が大きすぎるため、支払いは数年間に分けて払うことで先方と同意したとする。
 通常、業務の遂行に関連する損害賠償金は、その債務が確定したときの必要経費に算入される。いわゆる「債務確定主義」といわれる会計上の原則だ。
 しかし分割で支払う損害賠償金は、それぞれの額を実際に支払った年の必要経費に算入しなければいけない。分割払いは支払期日が到来してはじめて具体的に債務が確定するという解釈によるものだ。
 たとえ最終的な賠償金の総額について当事者間で合意があったとしても、総額を一括して未払金に計上することは認められず、その支払期日が到来する都度、その支払期日の到来した金額を必要経費に算入する。2つのやり方から好きなほうを選べるわけではないことに気をつけたい。
 損害賠償金のうち、保険金などで補てんされる金額があるときは、その金額を差し引いた金額が必要経費になる。またたとえ業務に関連していても、事故原因に故意・重大な過失があれば必要経費としては認められない。無免許運転、スピード違反、酒気帯び運転、信号無視などによる事故は、特別の事情がない限り重大な過失があったとされる。
 事故を起こしたのが従業員であった場合、その責任に応じて損害賠償金の一部を本人に負担してもらうのは法律上は可能だ。ただ事業主は社員の労働によって利益を得ている以上、社員のミスもある程度カバーすべきという考え方があるため、よほど大きな過失がない限りは請求は認められない傾向にある。


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