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▼今週の注目記事  納税3820号1面より

低コストで利用広がる
自筆証書遺言の保管制度

 自筆証書遺言の仕組みが大きく変化している。2019年1月から自筆証書遺言に添付する預貯金や不動産、負債などの「財産目録」は、ワープロやパソコンによる作成が認められるようになった。そして20年7月からは自筆証書遺言の保管制度がスタートした。1件につき3900円の手数料で法務局が遺言を保管してくれるこの制度は、間違いなく紛失・改ざんリスクを減らせる仕組みだ。当然、争族<gラブルを減少させる効果が期待されている。だが、法務局に保管されたからといって、その遺言書の法的効力が担保されるわけではない。低コストで利用が広がる自筆証書遺言の保管制度について調べてみた。

3900円の手数料で半永久的に保管

 遺言書には本人が自筆で作成する「自筆証書遺言」と、全国約300カ所の公証役場で公証人によって作られる「公正証書遺言」、そして内容を秘密にしたまま公証人に遺言の存在を証明してもらう「秘密証書遺言」の3種類がある。

 このうち「自筆証書遺言」の仕組みがこの数年で大きく変化した。自筆証書遺言は、煩雑な手続きが不要で気軽に作成できるが、これまで遺言書やそれに添付する財産目録については「全文手書き」が義務付けられていた。誤字や脱字はもちろん、読めない文字があっても無効とされるため、自筆で遺言書を書くのは煩わしいとされてきた。不動産や株式、預金などの「財産目録」が長文になる場合、誤字や脱字といったミスも起きやすかった。

 このため2019年1月から自筆証書遺言の作成方式が緩和された。「財産目録」はワープロやパソコンでの作成が認められるようになった。さらに預金通帳のコピーや不動産登記事項証明書などを添付して財産目録とすることが可能となり、遺言作成の負担が大幅に減った。ワープロやパソコンの使用が認められたことで、家族が入力作業を代行してもよくなったわけだ。できあがった財産目録や通帳コピーなどの添付書類には本人が署名捺印するだけで問題なしとなった。制度の緩和が影響したのか、都内の行政書士は「認知症が心配な人や、相続の大変さを意識した人が、きちんと遺言書を残したいと考えるケースが増えている」と話す。

 そして20年7月には法務局が自筆証書遺言を保管する制度がスタート。自筆証書遺言を法務局に預けられるようになった。これまで自筆証書遺言は自宅の机や金庫などで保管するしかなく、第三者に改ざんされたり、紛失したりされたりするリスクが常につきまとっていた。だが、保管制度が始まったことで、法務局が遺言の存在と内容の真正性を担保してくれるようになった。

 保管制度では、本人が作成した自筆証書遺言について、法務局がその原本とデータを半永久的に保管してくれる。被相続人の死後に、相続人が家庭裁判所で遺言書の検認手続きをする必要がなくなるというメリットも挙げられる。また、相続人のうち1人が閲覧した時点で他の相続人にも遺言書の存在についての通知がなされるため、特定の相続人しか遺言を読めないというトラブルも発生しない。

 公正証書遺言では、公証人の立ち会いのもと、遺言書を読み上げてハンコを押すことになる。財産の規模にもよるが、費用は数十万円から、場合によっては100万円以上かかる場合もある。その点、自筆証書遺言の保管にかかるコストは1通につき3900円で、コストはその都度かかるものの、後からの変更も可能だ・・・(この先は紙面で…)

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