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▼今週の注目記事  納税3855号1面より

サントリーは大政奉還≠ナきたが…
重臣の扱いは慎重に

 サントリーホールディングスは昨年12月、創業家出身の鳥井信宏副社長が次期社長に就任するトップ人事を発表した。新浪剛史社長から創業家への大政奉還≠ェ実現したかたちだ。だが、有能な重臣は、有能であるからこそ反旗を翻すケースも少なくなく、時にオーナー企業にとっての重大な事業承継リスクになりかねない。

事業承継の潜在リスク

 サントリーの社長の座に創業家一族が就くのは10年ぶりのことだ。2014年、5代目にして初の非創業家出身の新浪氏が就任するにあたっては、現会長の信忠氏から「(鳥井)信宏を次の社長に育ててもらいたい」と依頼されたといい、信忠氏も「最低10年間は新浪さんにがんばってもらいたい」と述べていた。ちょうど10年目となる今回の社長交代は、まさに創業家が計画していたとおりの大政奉還≠フ実現といえるだろう。新浪氏も今回の人事発表について、「よい商品を作るこだわりを続けるには創業家ならではの価値観がないとできない」「ものづくりにおける創業家の大切さをすごく感じている」と述べ、信宏氏に社長の座を譲り渡す方針に同意した。

 オーナー企業にとっての有能な重臣は、新浪氏のように事業のかじ取りすら任せられる頼もしい存在だ。創業家だけでは足りない部分を補い、時には社内の綱紀を粛正するなど憎まれ役も買って出ることができる。新規事業の立ち上げや子会社の経営、国際進出やDXなど、さまざまな面で重臣を活用することが、オーナー企業の成長にとっては不可欠だろう。

 だが、それだけに重臣が離反すれば会社にとってのダメージは大きい。己の実力に自信を持つからこそ、重臣によるオーナー一族への謀反≠ヘ、中小企業にとって決して珍しいことではない。

 関西で製造業を営むある中小企業では、創業者が認知症となり、後継者もまだ修行中だったため、サントリーのように会社の役員を中継ぎ登板≠ウせることにした。中継ぎであることを本人も納得していたはずだが、果たして数年後に「会社の全株式を買い取りたい。断るなら幹部社員を連れて独立する」と反旗を翻した。すでに社内や主要取引先にも内諾を得ており、決裂した場合の損害は計り知れない状況が明らかになったという・・・(この先は紙面で…)

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