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国税当局が、消費税の還付申告に対する審査・調査体制の強化を進めている。かつて各税務署の担当部署に一任していた申告書の審査は、各国税局で集約処理を行う「内部事務センター」への移管が進行中だ。
不正還付事案の調査に特化した「消費税専門官」のポストを全国の税務署で増員し、5カ所の国税局への担当調査人員の拡充も進めている。2022年10月には東京国税局が、従来の調査・審理・徴収の縦割り制度を排除して不正還付の調査にあたる「消費税不正還付対策本部」を設置した。局内で調査をリードする消費税担当の「統括国税実査官」を筆頭に約130人が所属するものだ。
一連の取り組みの背景には、消費税率の引き上げや取引のグローバル化により急速に増えている還付申告に対する国税当局の警戒感がある。近年の国税庁長官や各国税局の局長の就任インタビューでは、抱負として「納税の公平性を保つため、消費税の不正還付を徹底的に取り締まる」と強調するのが恒例だ。
国税通則法上では「還付金は遅滞なく還付しなければならない」という原則がある一方、消費税については不正申告を防ぐための審査や調査を実施する間、還付を保留することが通達や判例で認められている。つまり、不正還付の取り締まり強化は、企業にとって還付を受けるまでの期間が長引くことを意味する。神奈川県の税理士事務所の所長によると、「証拠書類の提出や取引実態の証明を事細かに要求されて、実際に還付金を受け取れるまでに1年近くかかったケースがあった」という。
不正防止は結構だが、還付の遅れが中小企業の資金繰りを直撃する点は深刻だ。都内の卸売業者は、「以前は申告から3カ月以内には還付金が振り込まれていたが、今は4カ月経っても音沙汰がない」と話す。「還付金収入をあてにして融資を受けていたので、このままでは返済が苦しくなる」と資金繰りに深刻な懸念が生じている状況だ。
国税当局は還付申告の審査について「必要に応じて確認書類の提出依頼や実地調査を行う」と説明したうえで、申告ミスや不正の調査のために時間がかかる場合には「還付を保留する期間が長期にわたることがある」として、納税者に理解を求めているが、「長期」がどの程度を指すのかは明示されていない・・・(この先は紙面で…)