今国会で税理士法改正法案を含む「所得税等の一部を改正する法律案」が成立。「税務相談停止命令制度」は、改正税理士法の「54条」に「2」として置かれたもの。税理士でない者が反復して税務相談を行い「納税義務の適正な実現に重大な影響を及ぼすことを防止するために緊急に措置をとる必要があると認めるときは、その税務相談の停止を財務大臣が命ずることができる」とする。
財務省は「税務相談停止命令制度」を創設する背景として「SNSやインターネットで『節税コンサルタント』を名乗り、不特定多数に脱税や不正還付の方法を指南して手数料を取るなどの事例が散見される」ことから、「相談活動を防止するための措置が必要」と説明している。
東京・渋谷区で事務所を構える税理士は「税理士の絶対数が少ない地方都市ではニセ税理士が相当数いることが想定される。また税務協力団体の事務局経験者などが軽い気持ちで税務相談に応じているうちに本業♂サしてしまったという話を耳にする。特に不正還付請求などの組織的な犯罪の取り締まりには効果があるのではないか」と話す。
また都内の国税OB税理士は「税の知識のない人たちを食いものにしようとする行為であることは明らか。たとえ無料であっても放置できない」とし、税理士でない者による相談≠ノメスを入れるのは当然という見解だ。
だが懸念されるのは、「違反」とする対象や範囲が限りなく拡大する恐れがある点だ。条文は抽象的に書かれていると言わざるを得ず、どのようにも解釈できてしまう。
昨年3月の参院財政金融委員会で、住澤整国税庁長官(当時は財務省主税局長)は「納税者同士で一般的な知識を学び合うといった、現在の税理士業務である税務相談に該当しないような取り組みを対象とするものではない。一般的な税法の解説などにとどまる場合には、通常対象となる税務相談には該当しない」としたものの、「個別具体的な事実関係に基づいて判断をする」との含みを残して答弁した。つまりは税務相談を行っている個人や団体に対して税務署員の判断によって抜き打ちでの恣意的な調査がなされることも否定できない。
新制度では税務署員に質問検査権を認めており、本紙で「税論卓説」を監修する岡田俊明税理士は「課税庁側によって拡大解釈がなされ、納税者の自発的な申告運動を標的にした『弾圧』法規に変身しないか心配だ。青色申告会などの零細事業者を支援する活動は、税務行政を支えていると言えなくもない。実際、昨年のインボイス制度導入で苦しんだ免税事業者層の消費税申告などを支援する仕組みは税務行政にはない」と指摘する。
同制度によって「対象」とされる可能性があるのは、各種団体による納税者支援活動だけではない。例えば、金融機関などが富裕層を集めて開く「相続税節税セミナー」や、輸入豚肉業者らによる「差額関税勉強会」の会場に抜き打ちで調査が入り、質問検査権を行使すれば、参加者全員の会計帳簿を押さえ、各々の会社にまで踏み込むことも可能となりかねない・・・
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