オーナー社長向け財務・税務専門新聞『納税通信』。
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税務調査で納税者の申告内容が正しいかどうかを確認するには、帳簿書類や各種原始記録と照らし合わせて検討するのが大原則だ。しかし、帳簿記載の不備や原始書類の保存状況が悪いなどの理由で所得金額の検討が不可能な場合には、推計課税が認められている。
推計課税とは、当局が更正や決定などの課税処分をする際、納税者の生活状況や財産債務の増減の状況、収支の状況、生産量、従業員数、同業他社との比較―といった客観的な資料情報から所得金額を「推計」し、金額を決定することを指す。
その強引な手法だけでも十分脅威だが、執行に当たっての具体的な判断基準などが必ずしも明らかにされていないことから、不透明な不気味さも加わって異様な迫力を醸し出し恐れられている。
「推計」という手段はいささかやりすぎ感がないでもないが、帳簿などの直接的な資料がなかったり、納税者の非協力によって実額が把握できなかったりするからといって、課税を放棄することは租税の公平の観点から許されない。むしろそうした状況にある納税者こそ、何としても適正な所得金額をはじき出す必要がある。かなり強引にも見える推計課税が税法に存在し得るのは、こうした理由からによる。
もちろん、推計課税という強引な手法を取るためには、ある程度の条件があり、そのひとつが、「白色申告者であること」というものだ。青色申告者は、正確な記帳が行われているため推計課税の入り込む余地はない、というのがその理屈だろう。青色申告者であって、請求書や領収証の保存が不十分であれば、そもそも青色申告の要件を満たしていないとみなされ、青色申告の承認を取り消された上で推計課税を受ける「ダブルショック」の恐れもあるが、少なくとも、青色申告を取り消されるような後ろ暗いところがないのであれば、原則として推計課税のターゲットとなることはないだろう。
この推計課税の根拠は現在、法人税と所得税で規定されている(法人税法131条、所得税法156条)ものだ。つまり、所得税と法人税以外で推計課税を行うことは、法律上認められていない・・・(この先は紙面で…)