国税の還付金は国税通則法上、「遅滞なく、還付しなければならない」とされている。「所得税の還付申告」についてはこれに基づき、国税庁実績評価実施計画で「6週間以内の処理件数」の目標を還付申告の95%と定め、2023事務年度には94.3%という実績を残した。
その一方で、「消費税の還付申告」については目標も実績も記載されていない。だが、所得税と比べて早期の還付が行われているとは考えにくい。当局は、消費税の還付金に限定して「支払保留」になる場合があると注意喚起している。このことからも、消費税の還付には時間がかかるものと推測される。
国税庁はこのほど「消費税還付申告に関する国税当局の対応について」と題した文書をホームページに掲載。そのなかで「消費税の仕組みを悪用し、実際に取引をしたように見せかけるなど、虚偽の内容で申告書を提出して、消費税の還付を不正に受けようとする事案も発生しています」などと報告している。課税取引・非課税取引の区分や、固定資産の取得時期などで誤りが多いことも問題視したうえで、「各種情報に照らして必要があると認められる場合は、還付金の支払いをいったん保留」するとしている。
この文書が、不正還付請求を牽制したものであることは間違いないといえるだろう。ただし、それだけが理由ではないと指摘する声もある。都内のある税理士は、「還付申告してから4カ月経っても何の音沙汰もなかったため、こちらから問い合わせたケースがありました。1年待ったという人もいるようです。当局としては、そういった人からの問い合わせに備え、事前に時間がかかることを明示しておく必要があると考えたのでしょう」と分析する。つまり、「還付までの期間の長期化」といった当局の事情も関係しているとみているわけだ。
国税当局は近年、消費税の還付申告に対する審査・調査体制の強化を進めている。還付請求の調査に特化した専門官を全国の税務署で増員し、国税局でも担当人員の拡充を進めている。2022年10月には東京国税局が、従来の調査・審理・徴収の縦割り制度を排除して還付請求の調査にあたる「消費税不正還付対策本部」を設置した。局内で調査をリードする消費税担当の「統括国税実査官」を筆頭に多くの人員が所属している。
一連の取り組みの背景には、消費税の増税や商取引のグローバル化などで、急速に件数と金額が増加した還付申告に対する国税当局の警戒感がある。「注意喚起の文書」などは、それを端的に示すものだといえるだろう。また、国税庁長官や各国税局長へのインタビューなどで繰り返し強調される「納税の公平性を保つため、消費税の不正還付を徹底的に取り締まる」といったコメントからも、当局の姿勢がうかがえる・・・(この先は紙面で…)