税理士は顧問先と密な関係を築いていて、かつ財務状況を最も熟知している専門家でもあることから、いわゆる懐具合≠ノ応じて加入を検討する生命保険の提案業務との相性が良いとされる。また、保険加入はリスクヘッジという本来の趣旨に加え、節税にもつながるものとして経営者に重宝されてきた点からも、税の専門家の出番ということになるようだ。
そのため、開業したばかりの税理士が、保険会社から代理店登録の勧誘を受けるというケースは珍しくない。また確定申告期が終わった時期には、保険会社が販促ルートの拡大に向けて、会計事務所に営業をかけるのが一般的ともなっている。その影響もあって、税理士業務以外の副業≠ノ保険代理業を選択する税理士は多い。
日本税理士会連合会の「税理士実態調査」の最新の報告書(2024年調査)によると、回答した開業税理士2万4017人のうち、副業を「行っていない」と回答したのは1万6222人で全体の67.5%。「行っている」と回答したのは6930人で28.9%だった。3割が何らかの副業を行っているなかで、その具体的な仕事(複数回答)として最も多く挙げられたのが「保険代理業」だ。副業をしている開業税理士6930人中3009人、じつに43.4%が本業∴ネ外の業務として保険代理業を行っているという。
副業としてはほかに、「他士業資格の業務」が27.3%、「不動産経営」が25.5%、「大学院、大学、専門学校の講師等」が5.1%、「税法に関する講師等」が4.6%、「文筆業」が4.5%などとなっている。いずれも保険代理業と比べて割合が低い。
多くの税理士が関わっている保険提案業務だが、保険代理業自体は厳しい環境に置かれつつある。
乗合代理店の設立や銀行による保険商品の窓口販売が業法改正で解禁になって以降、税理士業界に限らず、保険代理業に関わる事業者が急増した。だが競争の激化にともない、極めて高額な手数料の商品や度を超えたインセンティブのある保険を販売するケースが目立つようになる。こうした状況を受けて16年には保険代理店の「業務態勢の整備」を目的とした法改正が行われ、管理コストが増加するとともにインセンティブ収入が減少し、多くの代理店がダメージを受けた・・・(この先は紙面で…)